Vol. 3 ピエール・ギルソン (1914-
多様な合成宝石を生み出した天才
ピエール・ギルソンは宝石合成の先駆者です。彼の会社は合成エメラルド、合成オパール、合成トルコ石、そして、珊瑚やラピスラズリなどの多様な人工宝石を手がけました。アメリカのチャザムと並んで、合成宝石の歴史に名を残す天才です。
ギルソンはフランスの窯業技術の専門家で、フランスのカレーに工場を持つ高級陶磁器会社の経営者です。大学卒業後の1935年に、家業ある陶磁器会社に入社し、技術革新をもたらしました。
キャロル・チャザムの合成エメラルドに感銘を受けた彼は、その後、本業は子供たちに任せスイスに設立した研究室で宝石合成の研究をライフ・ワークとする日々を送っていました。
ギルソンは個人の力で宝石の合成を試み、製法特許を申請せずに秘密裏に宝石の製造をしていました。
ギルソンは合成宝石の熱心な伝道師です。彼は「研究室で合成される宝石は、母なる大地が創り出す宝石にとても近く、その価値を高めるもの」ですが、「合成宝石が天然石の市場への脅威となってはならない」とも思っています。
市場での誤解を避けるために「ギルソン社で生産される合成宝石が正しい販売経路をたどれるように、研究所にて生産された宝石であるという証明書付で販売する」ことを明言しています。
ギルソンは1990年代におそらく高齢のために合成宝石の製造を止めました。その技術は窯業会社を経営する家族に引き継がれることもなく、天才の一代限りの趣味の技術として宝石の歴史に名前を残すことになりました。